LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)におけるブランド戦略を歴史からひもとく。投資会社によるブランドの買収は80年代後半から活発化して、誰もが知っているブランドの多くはいくつかのグループの中に含まれている。たとえそのなかのブランド同士が競合するように見えても、うまく秩序を持ってすみ分けていると論じている。
この本ではブランドを軸にした企業戦略についてを力点にしているが、このことについて考える前に、ブランドとはなにかをちょっとだけ議論しておきたい。
ブランドの力について力説している一般書が多いが、経済学的な観点から見て、短期的な流行による盛衰はのぞくと、ブランドによるプレミアは無視できる。特にカバンや服飾など、ほぼ自由な市場が形成されている物品については経済学の原理がそのまま当てはまる。いいものは高く売れるし、そうでないものはそれなりということだ。だれもそれを妨げることはできないしブランドによるプレミアは広告費以上の価値を持つことはない。つまり中長期的には、商品の値段にはそのもの自身の品質による市場価値以外は含まれていないとしていい。よく言われる、ブランド名にお金を払うということは、経済合理性から考えてありえない。結局ブランドの価値は、商品の品質からしか生まれてこないからだ。実際、商品の品質が落ちてしまったブランドは急激に衰退していく。
以上で簡単に考えたように、自由市場での商品については短期的にはブランドに意味があるが中長期的には意味がない。それなら、逆も真ではないだろうか。規制産業では、ブランドが強い意味を持つ場合もあり得るのではないか。具体的には農業やマスコミ、そして教育産業である。私は大学に身を置いているが、実は大学はこのようなブランドとしての資質、つまり、金銭的成功よりも名誉の重視、大量生産できない商品、歴史や伝統を重んじる風土、強い規制のもとでの経営、を強く持っているといえる。
この本自体は経営戦略をさらっと述べているだけであるが、多くの自由市場で戦うビジネスマンには、効率化や資源の集中などこれまで言い古されたことばかりで、それほど役に立つことはない。逆に規制産業に身を置く人にとっては、特に私にとってはブランドの意味合いを考えさせられるものであった。