January 08, 2004
市場の倫理、統治の倫理

何度か読み返して、精読しようと思わせる本は年に2~3冊あるが、その一冊。
民間の商業的な倫理と、政府など統治者側の倫理はそれぞれが独立した倫理体系を構成しており、かつ相容れない、ということを会話形式で解き明かしている。
確かに、政府役人が金儲け主義に走ることは全く奨励されてないが、民間は金儲けを追求するのが推奨されている。民間が独自に警察権力を持つことは認められていないが、政府が警察権力で民間人の行動に制限を加えることは認められている。こういう全く個別の倫理体系の議論する中で、民主主義とカースト制、科学や芸術などの文化の意義も含めて広範囲に社会を考察している。特に二つの倫理体系の混合に対しては、原理的に問題が生じると、強く警鐘をならしている。実際日本でも第3セクターなど民間と政府が一緒になった組織は、効率化を目指して作られたものが多いが、その目的が達成されず単体では起きなかった問題が生じている例は数多い。また大学などの教育・研究施設に市場原理を取り入れることができるのかどうかなど考えさせられるべき点も多い。
著者の経済学的理解水準は疑問のある点も多いが、それでもなおこの本の価値は色あせない。文庫落ちもしたことだし、買って読むべし。

Posted by senyo at January 08, 2004 09:00 AM
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